後見制度支援預金とは、被後見人の財産を守るために制定された制度で、近畿産業信用組合では「後見制度支援預金」の対応をしています。
後見制度は普段あまりなじみのない言葉なので、どのような預金サービスなのか不明な方が多いでしょう。
今回は近畿産業信用組合が行っている「後見制度支援預金」について説明します。
さらに近畿産業信用組合が提供する「後見制度支援預金」を利用する条件や手続きと注意点について解説しますので、ぜひご覧ください。
※追記予定
Contents
後見制度支援預金とは
後見制度支援預金とは、後見人制度を利用している方が対象の預金サービスです。
後見人制度とは、さまざまな障害や病気により自分ひとりで物事を決めるのが困難な方に対して、契約や手続きをサポートする後見人を設ける制度です。
後見人制度には「成年後見人制度」「法定後見制度」「未成年後見制度」など複数の制度が存在します。
それぞれの制度内容について説明します。
利用対象者
後見制度支援預金の利用対象者は被後見人です。
後見制度支援預金は、被後見人の生活に必要な費用以外の財産を適切に管理するのを目的に始められた制度です。
後見制度はそれぞれの立場により以下のように呼びます。
被後見人 | 認知症や知的障害があり自身の判断能力が不十分な方 |
後見人 | 被後見人に代わり手続きを行う方 |
専門職後見人 | ・被後見人の状況を鑑みて後見制度支援預金の使用に適するか判断 ・制度利用に関する家庭裁判所との手続きを終了したら辞任 |
利用するには家庭裁判所の審理や審判が必要なため、手続きが可能な専門職後見人が本人や後見人に代わり手続きを行います。
利用するにあたって必要な経費
後見制度支援預金を利用するには、家庭裁判所で事前に手続きしなくてはなりません。そのため、まず専門職後見人が選任され、手続きを実施します。
東京家庭裁判所は平成25年1月1日に、成年後見人等の報酬額の目安を示しました。
成年後見人が通常通り後見事務を行って得られる報酬は「基本報酬」と呼び、月額2万円が報酬の目安です。ただし、預貯金以外に有価証券など流動資産を含めた管理財産額が1,000万円~5,000万円以下の場合の基本報酬は、月額3万円~4万円となります。さらに、管理財産費が5,000万円を超える場合の基本報酬額は月額5万円〜6万円です。
後見人の後見に関する事務において、報酬付与申立事情説明書に記載されている特別行為に対応した場合は、付加報酬と呼ばれる追加報酬を得られます。
近畿産業信用組合の「後見制度支援預金」の特徴とは
ここからは、近畿産業信用組合の「後見制度支援預金」の特徴について紹介します。
項目 | 内容 |
---|---|
適用利率 | 店頭に表示する普通預金金利+0.1%の金利 (金利は原則、毎月第一月曜日に見直されます) |
預入金額 | 1円以上(1円単位) |
預入期間 | 家庭裁判所より発行される「指示書」に基づいて期間が設定されます |
対象者 | ・組合員もしくは組合員となる資格を有する方 ・家庭裁判所で後見開始の審判を受けており、家庭裁判所より「指示書」を受けている方 ※手続き自体は後見人が行います |
税金 | 受取利息は20.315%(国税15.315%、地方税5%)相当額の税額が差し引かれます。 |
払戻や解約 | 家庭裁判所が発行する指示書が必要 |
「後見制度支援預金」を利用する条件とは
「後見制度支援預金」を利用する条件は以下の通りです。
- 被後見人の財産が一定額以上の金銭である
- 被後見人の収支計画を立てる
一つずつ見ていきましょう。
条件1.被後見人の財産が一定額以上の金銭である
被後見人の預金が少ないと日常生活の金銭として使用するため、預金して管理する必要はありません。後見制度支援預金として日常生活に含まない金銭を別途管理する必要がある場合に利用するサービスといえます。
また、財産の種類が金銭ではなく、不動産や株式といった有価証券や流動資産の場合も後見制度支援預金の利用はできません。
条件2.被後見人の収支計画を立てる
後見制度支援預金を利用するには、被後見人の生活環境を考慮しなくてはなりません。そのため、収支計画を立てる必要があります。
将来、入院療養など被後見人に日常生活以外の費用が発生したとしても、金銭に余裕がある状態でなければ、後見制度支援預金は利用できません。
「後見制度支援預金」を利用するにあたって必要な手続きの流れ
「後見制度支援預金」を利用するにあたって必要な手続きの流れは以下の通りです。
- 家庭裁判所での手続き
- 専門職後見人の手続き
一つずつ見ていきましょう。
家庭裁判所での手続き
まず、家庭裁判所で後見制度の開始や後見人選任の申し立てを行います。
家庭裁判所は後見制度支援預金の利用を検討すべきか、専門職後見人を継続的に活動してもらうのかを審理します。
審理が通り利用すべきと審判が下ると、弁護士や司法書士といった家庭裁判所の手続きに関する知識を有する専門職が後見人として認定されるのです。
専門職後見人の手続き
専門職後見人が選任されると所定の手続きを行うべく検討します。
まず、被後見人の生活状況や財産状況を確認し、後見制度支援預金の利用に適しているのか確認段階に入ります。
専門職後見人が後見制度支援預金の利用に適していると判断すると、以下の内容を設定します。
- 後見制度支援預金に預入する金額を設定
- 後見人が日常的な支出に充当させるための金額を設定
これらの設定を実施し、家庭裁判所に報告書を提出するのが専門職後見人の仕事です。
家庭裁判所は提出された報告書をチェックし、被後見人が後見制度支援預金を利用するのに適しているのか判断します。適していると認められれば、家庭裁判所は専門職後見人に対し「指示書」を発行する流れです。
近畿産業信用組合では、専門職後見人が受け取った「指示書」の提示を受けてから初めて、後見制度支援預金の口座開設が可能です。
通常の場合、口座を開設できた段階で、専門職後見人から親族後見人に対し、後見人の事務を引き継ぎします。
後見制度支援預金を利用するうえでの注意点
後見制度支援預金を利用するうえでの注意点は以下の通りです。
概要 | 例外事項など |
---|---|
預金預入および支払い請求は不可 | ・家庭裁判所発行の指示書で指定される場合 ・近畿産業信用組合の普通口座に対する振替の定額自動振替サービスのみ利用可能 |
自動受取及び支払口座としての利用は不可 | ・給与などの受け取りや、公共料金等の各種支払などの受取/支払口座としての設定は不可 |
各種サービスの利用不可 | ・マル優 ・総合口座 ・インターネットバンキング ・テレホンバンキング等の付帯サービス |
キャッシュカード | 利用できません |
代理人届による取扱は不可 | 後見人の代理人による手続きは「委任状」により、近畿産業信用組合が認める場合に限る |
後見制度支援預金と後見制度支援信託との違い
後見制度支援預金と同じような制度の中には、後見制度支援信託もあります。
制度自体はほぼ同じものですが、相違点は以下の通りです。
- 専門職後見人の選任基準の違い
- 取扱い可能な店舗の違い
- 特別な手数料の有無
後見制度支援信託では専門職後見人の選任は必須ですが、後見制度支援預金では家庭裁判所の審理に委ねられます。
後見制度支援信託は取扱い可能な店舗が信託銀行のみのため、居住地によっては近隣に信託銀行がないと利用しづらいデメリットもあるでしょう。後見制度支援預金は信用組合や銀行での取扱いが可能です。
また信託銀行に対して預入をする場合、管理や運用に対する信託報酬の支払いが必要なケースも多いです。受託金額も1,000万円以上に設定されている場合が多いので、後見制度支援信託は金融資産の多い方でないと利用しづらい制度となっています。
まとめ
ここまで、近畿産業信用組合の「後見制度支援預金」の解説をしました。
もともと後見制度支援預金の制度が始まった理由は、親族などの後見人が被後見人の許可なく自分のために預金を利用するケースが散見されたためです。
後見制度支援預金は、自己判断が難しい被後見人が所有する金銭を適切に管理するために設立されました。
さまざまな手続きを専門職後見人に委ねて、家庭裁判所から発行される指示書がなければ手続きができないので安心して財産を守ることが可能です。